元上司の通夜からの帰路。
夜の8時前と言うだけあって、車の往来が多い。
川沿いの通行量の多い堤防を利用した国道を走っていた時、反対車線の
ガードレール沿いを走る小さな人影。
驚きながら見ると、小さな子どもが走っている。
近くを見るが、保護者らしき人の姿も見えない。
歩道もない狭い道で、往来する車の速度も早い。
街灯もなく真っ暗な道路。
慌てて、車を停車させハザードを点灯。
車を飛び降り、走ってくる車を制止しながら道路を横断し子どもを確保。
アニメキャラクターの絵の付いた長靴を履いて、右手にはペットボトル。
まだ2~3歳の男の子。
「どこに行くの?」と聞いたら「家に帰る」と言う。
ん~、こんなとこに住宅なんぞあれへんぞ???
そこにいると、私も危険なんで「とりあえずオッちゃんの車に乗ろう」と
言って車に乗せた。
自分のことをオッちゃんと言ってしまったのが我ながら悲しいが、
お兄ちゃんと言うには無理がある・・・。
で、名前とか家とか色々と聞いたものの全く言えず。
確かに、言えるほどの年齢でもない。
泣くこともなく落ち着いているんで、家に送り届けようと思い、
その近くを車で走ってみた。
しかし、家のあるところと違うと言う。
こりゃ、警察に行くしかないと思い、警察署に向かっている途中で
私の職場の総本山の前の交差点で赤信号で停まった。
「ここは見たことあるか?」と聞いたら「ある」と言い、指差し「あっち」と
言った。
んじゃあってわけで、少年の言うままにハンドルを切る。
しかし、違うと言うばかり。
やっぱり警察に以降と思った時、若い男性2人が歩きながら何かを
探しているのを発見。
何だか怪しい。
で、♪探し物は何ですか?♪と聞いてみた。
すると、子どもを捜していると言う返事。
すぐに車を停め事情を聞くと、彼らは少年の母親が子どもを捜してたんで
協力していたらしい。
じゃあ、母親に連絡をと言うと、見ず知らずの人で、電話番号も分からないし
顔も知らないみたい。
彼らの友達数人も同じように探してるってことなんで、そこから何とか連絡を
取ってもらうように頼んで、近くのスーパーマーケットの駐車場に移動。
しばらくするとパトカーが到着。
それと同時に家族が到着。
お父さんに少年を返し警察の事情聴取を受けている時にお母さんが到着。
涙が流れそうになるくらい嬉しかった。
交通事故に遭っていても不思議じゃない。
また、悪意のあるヤツに連れ去られてたかもしれない。
警察官がお父さんに住所確認をするのが聞こえた
お父さんは「○○です」と答えていた。
少年の自宅は25kmくらい離れている隣町。
しかも、少年が走っていた方向は正反対。
少年よ、どこに行こうとしていたんだ?
ま、良かった良かった!
ただ、一つだけ腹が立つことがある。
それは、私が少年を保護するまでに、何十台、いや何百台もの車が
少年の横を走り抜けていた。
何故、誰も声をかけてやらなかったのか?
何故、超危険な状況なのに保護してやらなかったのか?
そんな冷たい世の中に腹が立つ。
そんな冷たい人間に腹が立つ。