横好きオヤジの見聞録

何をやっても二流か三流で一流にはなれない下手の横好きなオヤジの日記

幸せの手紙

   かさをひろってくださった、しん切な〇〇〇〇〇〇のかたへ・・・

   わたしは学校のかえりに、川にかさをおとしてしまいました。

   わるいことをしてしまったので、しょんぼりして、いえにかえりました。

   「ただいま。」も言えませんでした。

   おばあちゃんが「どうしたの。」と言うので、かさをふりまわして川へ

   おとしてしまったことを言いました。

   とてもきつくしかられました。

   「もし、人にあたったらどうするのよ。」と。

   その日は、ばつとして、おやつをたべさせてもらえませんでした。

   それがきのうとつぜん学校で先生からかさをわたされ、びっくりしました。

   わけを聞いておどろきました。

   ほんとうに、ありがとうございました。

   これからは気をつけてあるこうと思います。

            〇〇〇〇〇小学校 二年

            〇〇〇〇〇〇

職場に、私宛に届いていた手紙である。

文字を忠実に書き起こしてみた。

こないだ、出勤時に駐車場から職場まで歩いていると、5人ほどの小学生が

川を覗き込んで困ったような顔をしていた。

「どうしたんだぁ~?」と聞くと、「傘を落としちゃいました!」と言う。

見ると畳んだままの黄色い傘が沈んでいた。

雨は降っていなかったんで、振り回して遊んでて落としたのだろう。

その川は、職場沿いを流れるコンクリート三方打ちで高さが3mほど。

その場では取ることも出来ないんで、小学生たちに「あとで取っとくしきゃあ、

学校に行ったらエエわ!」と言い、学校に向かわせた。

異変に気付いた、交通立ち番をしている近所の高齢男性が来られたんで、

事情を説明して、後で取って職場に保管しておくことを伝えて出勤した。

出勤後、上司に事情を説明して回収作業開始。

梯子を出すほどでもないんで、長い棒の先に針金で作ったフックを取り付けて

吊り上げた。

そして、見ると近くに、別の傘も沈んでいたんで、それも回収。

その傘は、落としてから時間が経っているようで、糸ミミズが繁殖してた。

ただ、全く傷んでなくて綺麗だった。

吊り上げ道具の製作から回収完了までの時間は僅か5分ほど。

職場に持ち帰って洗って干しておいた。

両方とも、きちんと名前が書いてあった。

午後になって、交通立ち番の高齢男性が来られ、学校に届けるからと持ち帰られた。

そして、職場に届いた突然の手紙。

長く沈んでいた傘の持ち主〇〇〇ちゃんの、お母さんが持って来られたらしい。

これほど嬉しい手紙を貰ったことはない。

今まで、仕事のことで、何通かの感謝の気持ちを込めた手紙を貰ったことがある。

しかし、今回の手紙が一番嬉しいと言うか、何度読み返しても涙が出そうになる。

ま、仕事とも関係ないと言えば関係ないし…。

お祖母ちゃん、きつく叱ってあげないで下さい。

そして、おやつを食べさせてあげて下さい。

気持ちは分かるけど、〇〇〇ちゃんは、間違いなく良い子ですよ。

こんなに丁寧に手紙を書ける子が悪い子のはずがない。

んでもって、小学校2年生にしては、恐ろしいほど字が綺麗。

52歳の私よりも綺麗かもしれない。

そして、封筒にお母さんが書かれた「傘をひろっていただいた〇〇〇〇の方へ」の

文字も無茶苦茶綺麗ですがなぁ~!

この2本の傘を落とした小学生たちとは面識がないと言うか、すれ違いざまに

「おはようございます!」と声を掛けるだけで顔も知らない。

小学生から「おはようございます!」と声が返ってくることは多くない。

ま、学校や家庭で、知らない人には注意するよう教育されてるから仕方ない。

それに、私は、こんな感謝をしてもらえるほどの善人ではない。

でも、この手紙で、物凄く幸せな気持ちになれた。

また、誰かが困ってたら助けてあげようと思う。

幸せの手紙をありがとう。

201572